【福場 将太】   【会員のつぶやき】  Top


(2021年7月15日)

    【その1】最愛の名探偵

 有名な名探偵を10人挙げてください、と言われてスラスラ答えられる人はかなりのミステリーファンだと思う。まずはシャーロック・ホームズが浮かぶとして、次に出てくるのは誰だろう。国外ならエルキュール・ポワロ、国内なら金田一耕助がやはり有名か。少し通になってくるとエラリー・クイーンや明智小五郎、2時間サスペンスが好きな人なら浅見光彦や十津川警部が思い付くかもしれない。

 推理小説やミステリードラマの味わいには、ストーリーやトリックはもちろん、謎を解く名探偵の魅力というのも欠かせない。特にシリーズ物となると、そのキャラクターは非常に重要で、いかに読者や視聴者を引き付ける名探偵を生み出すかということに推理作家は日夜頭を悩ませているに違いない。

 しかし、これまでにない新たな名探偵のキャラクターを考えるというのはなかなかに難しい。警察関係者や私立探偵以外にも、新聞記者、家政婦、俳優、博士、主婦、学生、時には動物や幽霊まで、古今東西様々な職種、老若男女の名探偵がすでに存在している。
 その意味では漫画から生み出された金田一少年や江戸川コナン、テレビドラマから生み出された古畑任三郎や杉下右京などは、ちゃんと知名度を確立した平成以降の名探偵として素晴らしい功績と言えるだろう。

 ちなみに僕が最も好きで最も衝撃を受けた名探偵は刑事コロンボ。この人が画期的なのは、ホームズを筆頭に多くの名探偵がまとっている超然的で天才的なオーラは一切なく、ヨレヨレのレインコートとモジャモジャ頭の冴えないおじさんであるということ。そんな一見うだつの上がらない刑事が銃撃戦やカーチェイスをすることもなく、ただ頭脳と心理の駆け引きだけで自信満々のエリート犯人を追い詰めていくこのシリーズは、世界中で幅広い人気を得た。特に日本では「うちのカミさんがね」という独特の邦訳と声優さんの名演もあって、お茶の間でもそのキャラクターが愛された。
 全ての話を収録したブルーレイボックスが世界に先駆けて日本で一番最初に発売されたのも有名な話。視聴者は犯人を当てるのではなく、最初からわかっている犯人と名探偵の対決を楽しむ。このスタイルのミステリーでは間違いなく金字塔であろう。

 実はコロンボを演じたピーター・フォークさんは幼い頃に病気で片目を失っている。表情で演技する俳優にとって片目が義眼というのはかなりのハンディキャップだっただろうが、コロンボのあの独特の目付きや挙動にはその義眼がプラスに作用していたように思う。
 あきらめずに俳優を続け、コロンボという当たり役にめぐり会い、世界中に知られる名探偵の一人になった。これは障害を価値に変えた、バリアバリューの一例と呼んでもよいのではないだろうか。だからこそ、僕は余計にコロンボが大好きなのかもしれない。


    【その2】僕の発明王

 僕がどんなに感謝してもし足りない相手、それはパソコンで使用する音声読み上げソフトの開発者様である。今だってこの文章が打てているのは紛れもなくその人のおかげなのだ。どこのどなたか存じませんが、本当に何とお礼を言ったらよいか。

 幸い中学・高校時代にパソコン部に所属していたので、当時はまだパソコンが一般家庭に普及している時代ではなかったが、僕はブラインドタッチを習得していた。学内新聞の記事や自作の曲の歌詞、ヘタクソな推理小説などをパソコンで打って楽しんでいた。大学に進んでからも趣味だけでなく、部活のホームページや合宿のしおりの作成、病院実習のレポートの作成などでもパソコンは大いに活躍してくれた。

 そして大学を卒業して精神科医になったわけだが、この仕事はやたらに書類作業が多い。カルテには患者さんの症状だけでなく、語った言葉、生活歴や治療歴なども書かなくてはならないのでどうしても文章は長くなる。紹介状や各種診断書も同様だ。だから目が見えなくなった時、患者さんの姿が見えないこともそうだが、自分で文章が書けないことが大きなネックとなった。新米のくせに早々に引退も覚悟したくらいだ。しかしこの危機を救ってくれた物こそ、音声読み上げソフトである。

 おかげでまた自分で文章が打てるのは本当に嬉しい。例えば初診の患者さんが来た時、その人のこれまでの経過は必ずしっかり書く。仮に他の病院から紹介状を持って転院してきた患者さんでも、その紹介状に書かれた生活歴・治療歴を必ず自分の言葉に咀嚼して打ち直すようにしている。やっぱり自分で書くと頭に入るからだ。普段の診察の記録も、自分で書いた文章は次回読み返した時にその時の雰囲気や自分の気持ちを思い出させてくれる。なんと有り難いことか。

 その他、看護学校の講義で使うプリントやスライドの作成、ゆいまーるのこころだよりの執筆、メールのやりとり、そしてライフワークの小説や音楽の創作、これら全て音声読み上げソフトがなくては成しえないものばかりである。

 本当に開発者様には足を向けて眠れない。僕にとってはエジソンの白熱電球と同じくらい、いやそれ以上に歴史に残る、人生を救ってくれた大発明だと思っております。ありがとうございました!


(2020年8月11日)

    【その1】『こころだより』の書き方

 ゆいまーるのおかげで、点字毎日に連載中の『ゆいまーるのこころだより』の原稿を書かせてもらっています。文章の書き上げ方は色々あると思いますが、僕の場合は、ひとまずテーマを決めたら思い付くままに書いてみます。すると大抵規定文字数を超過してしまうので、今度はそこからどんどん削除する作業を行ないます。実はこれが結構面白いもので、まずは段落単位で大きく削除していきます。時には一つの話題が丸ごとカットになることもあります。

 続いておおよそ規定文字数に近付いたら、細かく単語や文を削っていきます。なんだか散髪してるみたいですが、最終的には最初に書いたものの3分の2くらいの文量になって脱稿します。またそこから編集者さんとの最終の微調整。散髪でいうと、頭を洗った後にちょこっと切りそろえる感じですかね。これでようやく完成版となります。

 まあこんな感じで書いている『こころだより』。今年の2月に神戸アイセンターのイベントに行った際、点字毎日の関係者とお会いして、読者からなかなかの反響をいただいているとの嬉しいお言葉をもらいました。それはきっと守田代表を始め、各先生方それぞれの文章のテイストがあってこそと思います。この8月末は僕の担当。依存、妄想、不安ときて、またまた精神科医療と切っても切れないテーマを選んでみました。この4カ月に一度の執筆がとても楽しみです。


    【その2】この曲は何色に見えますか?

 とりわけポップスやフォークソングといった軽音楽では、コードというものが重宝される。コードとはすなわち和音のことであり、Cのコードはドミソの和音、Aマイナーのコードはラドミの和音といった具合で決まっている。フォークギターなどはあの6本の弦で6つの異なる音を同時に鳴らして和音を奏でているわけだ。コードを切り替えていくのがすなわち伴奏であり、ここに歌の主旋律を乗せて曲の完成となる。

 このコードの世界が僕はとても面白い。音一つ一つには明るいも暗いもないのに、和音になると明るく響いたり暗く響いたりする。例えばドミソを鳴らすと明るいが、ミを半音下げてミのフラットにして鳴らすと途端に暗くなる。逆に一音足してドミソシの和音で鳴らすと爽やかになる。そう、どんなコードをどんな順番で並べるかが曲のカラーを決める。

 今年解散から50年を迎えたビートルズの楽曲が未だにあれだけ印象的なのも、俗にビートルズコードと呼ばれるそれまでになかった斬新なコードの使い方をしている点が大きい。ヒット曲を聴きながら、どんなコードが使われているかを解析するのが僕の密かな趣味である。

 先ほどカラーという言葉を使ったが、音楽には色があると思う。だから僕は誰かと音楽を聴いた時、「この曲は何色に見えますか?」と必ず尋ねる。何のこっちゃと思われることもあるが、ちゃんと色を答えてくれる人がいるととても嬉しい。

それは必ずしも僕が見えた色とは違うのだが、それもまた面白い。僕には水色に見えた曲が紫色に見える人もいるのだ。またギターやピアノをやっている人には、コード一つ一つが何色に見えるかも質問するが、この答えも人それぞれでとても興味深い。僕にはCのコードは黄色に見えるが、ある人は緑色と言った。僕にとっては緑色はEのコードだったりするんだけど、まさに十人十色、心の謎は深まるばかりだ。

 何はともあれ、目を悪くしても、耳で色彩を感じられるのは楽しいことである。


(2019年1月1日)


       福場 将太 Official Websiteのご紹介

       https://micro-world-presents.net/home/


 2019年元旦、長年の夢であった自分のウェブサイトを始動させることができました。自由に創作活動や表現活動を行なう小さな世界、その世界からの贈り物という意味でサイトは[MICRO WORLD PRESENTS]と名付けました。

 コンセプトはただ好きだからやる活動、僕が元気な心でいるために不可欠なライフワークを紹介していきます。主に更新していくコンテンツは、

  ★ 音楽室 … 自作の楽曲をアルバム単位で紹介
  ★ 図書室 … 自作の推理小説を紹介、刑事カイカンシリーズなど
  ★ 研究室 … 日々の思いを綴ったコラム、視覚障害当事者としての活動報告を掲載

 コンテンツはまだまだ充実させていく予定です。たまたま聴いたラジオから流れる音楽のように、たまたま立ち寄った本屋で手にした小説のように、ふらりとぶらりとこのサイトをお楽しみ頂けたら嬉しいです。
 いつでもお気軽にマイクロワールドへようこそ!

 *弱視の方、全盲で音声ソフトを利用される方にも閲覧しやすいサイトを目指して制作しております。