【安部 恵子】   【会員のつぶやき】  Top


(2019年9月2日)

     命の尊さ「患者の転落事故」

 私は、看護職として、長年勤めてきた。
 たくさんの新しい命の誕生、半面、医療治療で救われなかった方、その中でも自ら命を絶った方(自殺)、数十年経った今でも鮮明に思い出される。

 1.昼間の出来事   1件
 2.深夜帯の出来事  3件


 1.昼間の出来事

 心療内科治療中の60代男性。
 当時の建物4階病棟の談話室のその窓には転落防止柵はなかった。
 日勤帯の出来事である。談話室は誰もいなかった。その窓に上がろうとしていた患者を若い看護師が発見し、大声で叫びながら止めようとして、今にも飛び降りようとして窓にのりだしていた患者のパジャマを懸命につかもうとしたが、力及ばず。
 患者は転落し、亡くなった。

 その出来事に大きなショックを受けた若い看護師は退職していった。
 当時、病棟責任者として、患者と若い看護師を救えなかったことに、今も痛恨の思いである。


 2.病棟深夜勤務中の出来事

 【その1】
 当時6階病棟に勤務。
 下の階の非常階段から「止めてーー」とナースの叫び声。
 声と同時に若い男性が勢いよく下の非常階段から駆け上がってきた。6階の上は屋上になっていて、非常時避難のために、内側からロックできるようになっていた。

 下の階のナースの叫び声ですぐさま追いかけた。が、屋上に駆け上がった時、フェンスによじのぼっている男性の姿が見えた。私は、何を叫んだか覚えていないが、ありきたりの大声を出していた。しかし、患者の命は救えなかった。

 看護師を辞めようと何度も思った。
 当時の看護部長に引き留められ、とどまった。

 【その2】
 6階病床数60床。
 右上顎癌に侵され、右顔半分が腐敗し、顔がくずれてしまっていた50歳代 女性Mさんの自殺。
 個室に入っておられ、深夜3時過ぎ頃、トイレに行かれるのを見かけた。
 朝6時30分頃から、患者さまに顔ふき用蒸しタオルをお配りする作業と、検温に各病室を訪れた。
 Mさんは不在。

 窓が開いていて、ふと床に目をやると窓際の床にスリッパがそろえてあるのが見えた。
 窓にはフェンスはなく、胸騒ぎがして、窓から外を見た。3階には中庭が設置されていて、Mさんが倒れているのが見えた。飛び降り自殺であった。
 夜間にトイレに行かれた時に声をかけなかった自分が今でも心に強く悔やまれている出来事であった。

 【その3】
 3階外科病棟勤務の深夜交代後の出来事である。
 処置室で作業中、開けていた窓に白い布がひらひらと落ちていくのが見えた。
 と同時にドスーンという音。
 下を見ると人が倒れていた。即死であった。5階入院中の若い女性であった。


 これらの患者の事例は、何十年経った今も忘れられない出来事である。
 以後、事故防止委員会が発足し、事故防止対策マニュアルが打ち出された。