【相談窓口の変遷 〜 ロービジョン患者との関わり 〜】 【機関誌第5号】  Top


                        安 部 恵 子(あべ けいこ)(大 阪)


 1.はじめに

 私は看護師として26年間勤めてきた。
 2006年1月、網膜色素変性症という病気により、視覚障害1級認定となった。視力、視野障害のため、看護業務を行うにあたり、難しい状態であった。

 2006年4月、私が勤務していたT眼科病院では、日本医療機能評価機構の病院機能評価を受けるにあたり、「相談窓口」が開設された。そこで私が「医療相談」を任命された。相談者の年齢は50〜70代の加齢期に向かう中高年者が多く、相談内容は、病気や手術への不安、視力回復の不安、どんな病気なのか、治るものなのかなどや、免疫や体力の低下、健康に不安を感じる内容が多くあった。

 視機能に関しては、医者に「視力改善が望めない」「治療法がない」と言われれば、患者にとっては絶望感を抱くと思われる。今まで見えていたものが、見えなくなったことに、嘆き悲しみ、失明への恐怖に怯え、生きる気力さえなくす。その状況から、自力で這い上がろうとしても這い上がれない そのつらい気持ちを察し、共感することは、相談窓口の使命ではなかろうかと考える。
 これまで関わった相談を振り返り、相談窓口活動状況をまとめてみた。ここに報告し、学びえた相談窓口の「任務」「役割」を振り返る。


 2.相談窓口での私の事務処理方法の変遷

 ◇ 資料・カルテ等の閲覧方法 … 記録方法の順

   2006年   拡大読書器・ルーペ … 手書き
   2007年   拡大読書器・ルーペ … 一部手書き、パソコン拡大機能 Word
   2008年以降 拡大読書器・ルーペ、対面朗読 … ごく 一部手書き・パソコン拡大機能および音声利用、Excel


 3.相談概要

 ◎ 電話相談

 相談窓口での電話対応は、患者の心の傍にいることの安心感を与えたのではないだろうか。電話相談も状況により、心理的サポートとして有効なのではと考える。相談窓口とは、傾聴すること、寄り添って見守ること、共感することが大切であると改めて痛感した。


 ◎ 相談内容

 5年間の相談は、資料1は相談件数を、その内容は、資料2、3のように分類した。資料4では、眼科専門ならではの病気・治療に関する相談が全体の第1位を占め、また、ロービジョンの同一患者への継続的関わりは増えてきていることがわかった。

 健康では、生活習慣病、現代病、たばこと健康、ストレス解消法、リラックス体操など広報活動を行い、健康増進に努めた。中でも高血圧に関心が高かった。ノロウイルスやインフルエンザ、流行性角結膜炎の流行時期には、感染予防、その対策方法など推進に努めた。患者ご自身の生活を点検し、食生活や生活習慣を見直し、助言を行い取り組んだ。そのことは、眼の健康にも必要なことと言える。

 医療・福祉制度については、制度には何があるのか、それはどのような内容のものなのか、困った時はどこにいけばよいのかなどの相談であった。その窓口の紹介と、資料の提供に努めた。


 ◎ 相談窓口でのクレームについて

 主に医療従事者の対応で、接遇に関するもの、言動、説明不足(病気のことがよくわからない、手術のことが難しくてわからない、など)、診察室で医師に聞きたいことが聞けない(患者から質問や希望など)、病気・治療に対する説明の不一致(特に医師変更、交替時など)、医師と合わない・声がかけにくい、治療や術後の眼の回復への不安や不満、その他待ち時間の苦情などであった。

 まずは気分を害されたことに対して謝罪をし、その内容などについては、患者の承諾を得た上で、必要に応じてカルテに記載し、患者の質問や気持ちを医療従事者同士で共有できるように努めた。改善を必要と思われる事項に関しては、関連部署へ伝達し対応を依頼、連携がとれるようにした。


 4.おわりに

 ロービジョンケアは、患者自身の訴えがあって始めるのではなく、診察や観察から視覚的困難や失明が予想されるなら関わる誰もが情報を共有し早期のケアを開始すべきであり、その導入は私たち医療従事者の責務と確信するものである。