【[1]晴眼者と楽しめるタンデム自転車 [2] 私の資格試験受験レポート】 【機関誌第5号】   Top


                         高 橋 美 也 子(たかはし みやこ)(大 阪)


 [1]晴眼者と楽しめるタンデム自転車

 2016年8月から、大阪府下の公道でのタンデム自転車の走行ができるようになりました。(2017年11月現在、16府県で公道走行が認められているとのこと)

 我が家は大阪の長居公園のそばの住宅地にあり、日々の買い物をするスーパーなどへは徒歩10分から15分くらいかかります。重い荷物を提げて帰宅するのが苦になる時もありました。白杖がなくても一人で歩けていた頃は小型の4輪キャリーバッグを押して出かけていたこともありましたが、白杖が手放せなくなった昨今、近隣のお出かけや買い物にタンデム自転車を使えたらなと思うようになりました。

 兵庫県や京都府などでは以前から二人乗りの2輪タンデム自転車の公道走行が認められていましたが、そもそも自転車の数が多くて混雑気味の大阪ではまだまだ認可は無理やろな、と諦めていました。ところが、一昨年の8月から大阪府下でも走れるようになったとのこと、唐突な展開に驚きつつ、私も乗ってみたい!と2016年末に舞洲の障がい者スポーツセンターであったタンデム試乗会に行きました。
 催しの趣旨はパラトライアスロンの体験だったこともあり、私がトライアスロンに挑戦するきっかけにもなったのですが、まあこっちは置いといて…

 それ以前にも私は観光地などでタンデム自転車に乗ったことがあり、不安は全く感じませんでした。我が家にタンデム自転車があれば、夫と買い物に行くのも時短になったり、徒歩では行きにくいところへも楽に行ける…と入手をもくろみました。インターネットで調べてみると、スポーツタイプのものや少し折りたためるものなどもあるようですが、自転車屋さんの店頭に商品があるわけではないので、新車を購入する決断ができませんでした。

 例えば競技用のタンデム自転車は軽量ですが、前篭などは付けられないので重い荷物を持ち帰るのには向いていません。折りたためるタイプもおそらくそうだと思われます。「ママチャリタンデム…?」と思案しつつ各方面に相談していたら、昨年の夏に「大阪でタンデム自転車を楽しむ会」が中古のママチャリ風タンデムを安く譲ってくれるとのことになり取りに行きました。

 電車で30分以上かかる西淀川区から、初タンデム公道走行にもかかわらず(初日だから!?) 道に迷いつつ梅田駅前や御堂筋を通り、何とか自宅にたどり着きました。帰りに早速近くの自転車屋さんでヘルメットを購入し、防犯登録をし、前篭を付けてもらい、自転車保険の手続きをしました。

 現在、週末で雨が降っていなければチョイ乗りでも活用しています。真冬は寒いやろな、と言いつつ風を感じるサイクリングを楽しんでいます。

 2018年 正月


 [2]私の資格試験受験レポート

 視覚障害者にとっていわゆる「受験」には、そこに至るまでの過程を含め様々な「障壁」が存在するように思います。私は物心ついた頃には弱視だったので、小学生の時から何らかの「配慮」を受けてきましたが、その時々で望み得ることと提供されることは当然同じではなく変化してきました。
 昨年、久々に「受験」の機会がありましたので、その報告と過去の受験の思い出などを書いてみたいと思います。


 1 「アロマテラピー検定1級」を受験

 (公社)日本アロマ環境協会が年2回実施している「アロマテラピー検定」を2017年11月5日に受験しました。私はここ20年余り、録音した音声と拡大文字の問題用紙を使って公的な資格取得のため受験をしてきましたが、民間の認定資格を録音音声で受験するのは初めてでした。

 まず受験申込みの前に電話で問い合わせをして、webでできる申込み手続きとは別に特別措置の申請書の様式を取り寄せ、問題用紙と解答方式を選び、持ち込みたい物品(電子ルーペとレンズ式ルーペ)と要望事項(直射日光の当たらない座席を希望)を記入して受験申込みのタイミングで郵送しました。

 音声再生装置は協会側で用意することになっており、今時の音声データの提供はカセットテープではなくデイジーでした。当日用意されていたデイジー再生機(型番は事前に通知)の使い方が最初よく分からず、ちょっと時間を無駄にしました。また、ヘッドホンがしっかりしていて、私には重くて疲れました。試験そのものはやさしい内容なのですが、視覚障害者には1.5倍の時間延長が認められていました。

 私が受験した会場ではもう一人全盲の男性が同室で受験されていました。講義形式なら30名くらいは入れそうな部屋で、外の光は入らないようにしてありました。2人担当の係官がいて、私は桁数の多い受験番号を記入欄に書き込むことと、問題用紙内の4択の記号に鉛筆で○をつけて答えるのですが、終了時に○がちゃんとついているかどうか確認してもらう手助けを受けました。主に、訂正しようとして消しゴムで○をうまく消すことができていないところを指摘してもらいました。

 受験対策としては、サピエに少し内容が古いのですが、テキストデイジーの参考書があります。最新版の公式テキスト(上記協会が出版)の図書データが待たれるところですが、インターネット上に問題集などもあり、一人で受験勉強をすることは可能です。試験問題は全部で60問ほどでしたが、2問だけ「香りテスト」があって、アロマの精油の香りを嗅いで名称を答えるところがあります。出題対象の精油の香りを実際に知っておく必要があります。私は、対象の香りは大体わかっていたのですが、あやふやなところは時々アロマショップに置いてあるテスターの香りを嗅いで確認していました。

 12月上旬に合格通知と日本アロマ環境協会への入会案内が送られてきました。会員になって上位資格を目指すかどうかはまだ思案中です。


 2 高校、大学、各種資格試験の回想

 これまで何回か「受験」を経験してきましたが、時代の変化で受けられる特別措置が異なってきたことと、進行性の眼疾患のため、受けた措置の内容は多少違っています。
 私がいわゆる「受験」で最初に特別措置を受けたのは高校受験の時で、自分から要望したような記憶はないのですが、ただ保健室で別室受験ということでした。その当時はもちろん拡大文字の問題用紙や試験時間の延長などはなく、教員同士のおしゃべりが聞こえたり、体調が悪くなった他の受験生がやってきたりで、気が散って正直ありがた迷惑でたまりませんでした。

 大学受験の時は、共通一次試験のみ別室で、2倍の大きさに拡大した問題用紙と書き込み式の解答用紙を用意してもらいました。その頃は明るい座席を希望していたのですが、直射日光が当たってかえって見えにくかったことと、担当者と1対1で個室にいることで余計に緊張しストレスを感じました。そのためだったか二次試験のときはあえて特別措置を受けなかったように思います。

 その後、様々な試験において点字使用でない弱視者にも時間延長が認められるようになり、大学卒業後に一度、社会福祉士国家試験を受験しましたが、時間延長があっても問題全部を読みこなせず不合格でした。ところが、その2、3年後から音声での受験が可能になり、カセットテープレコーダーとルーペ、電気スタンドを持ち込んで受験ができるようになりました。

 1995年 社会福祉士、1999年 介護支援専門員、2003年には欠格事由が緩和されていた言語聴覚士試験に合格しました。ちなみに、あはき師、社会福祉士、介護支援専門員試験合格後の登録手続きは、そもそも視覚障害が欠格事由に含まれていなかったので、何か特別な書類を提出することはありませんでした。言語聴覚士の免許登録の際は、業務遂行ができる旨の医師の意見書などの書類を添付しなければならなかったと思います。ただ、私はその時 勤務していた病院の内科医にすぐ書類を書いてもらえたので特に不都合は感じませんでした。


3 その他、対面朗読など

 録音音声ではなく対面朗読で民間のライセンスの修了試験を受けたこともありました。全国病院理学療法協会の運動療法機能訓練技能講習会とNAUIのパスポートダイバー講習でした。これらは、ほぼ受講者みんなが合格することを前提としているようなものなのですが、その時の講習担当者によって対応が一定ではないかもしれません。

 また、「対面」することの緊張というか集中できない感じにはちょっと苦手意識を持っています。ただ、これらを含め時代が進むにつれ、より障害者にも開かれたライセンスが増えていくことと確信しています。
 現在は新たな資格取得の予定はありませんが、そのうち機会があれば、英語関連の検定試験か何かにチャレンジしたいと思っています。