【発刊にあたって】     【機関誌第6号】     Top


                     代 表   守 田 稔(もりた みのる)(大 阪)


 2001年、医師法など多くの法律で欠格条項が撤廃、あるいは緩和がなされました。そして視覚障害者も、医療従事者として働ける可能性が広がりました。
 2008年6月、視覚障害をもちながらいろいろな医療関係職に従事する者が集まり、情報や経験の共有、交流を深めることを主な目的に、『ゆいまーる』が発足しました。発足当初は当事者や家族、協力者を含めて20名足らずだった当会も、12年経った現在、会員は80名を超し、医療資格を持つ当事者は正会員、協力会員含めて40名を超えました。

 当初のテーマの1つだった医療情報の取得も、関係者の協力や機械技術の進歩のお陰で、大きく改善を認めました。しかしながら視覚障害者が医療従事者として働くことは、まだまだ困難なことが多く、職場環境や職種によってもその差が大きいのが実情です。
 ゆいまーるでは、今後も視覚障害者の医療職における就労継続、職域拡大を目指しつつ、医療職に従事する障害当事者だからこそできることを模索していきたいと思っています。

 2020年で、ゆいまーる発足から12年。ねずみの干支が一巡りしてきました。機関誌第5号が発刊された2018年から2020年3月までの間にも、ゆいまーるではいろいろな行事、出来事がありました。
 総会は、第11回を2018年6月3日に神戸で行い、第12回は2019年6月2日に東京・品川で行いました。

 神戸では午後から特別イベントとして、病院・施設の皆さまのご協力のもと神戸アイセンター・ビジョンパークで講演・見学・体験会をさせていただきました。また当日、私たちが見学しているところをNHK「視覚障害ナビ・ラジオ」の取材を受け、同年6月24日のラジオ第2にて、「特集:大人のための社会見学 〜 ゆいまーるin 神戸アイセンター 〜」として全国に会員の皆さまの声が流れました。

 東京では初めての試みとして、スカイプを使って九州と会場を繋いだ講演会を実施しました。そこでは、新たにできた国家資格、その第1回試験に視覚障害をもちつつ合格された杉原千恵美さんに、公認心理師と公認心理師国家試験についてお話しいただきました。

 第27回視覚障害リハビリテーション研究発表大会in神戸(2018年9月14日〜16日)では、私たちの実情を広く知っていただくことを目的に下記2つのポスター発表を行いました。
  P-72 『視覚障害をもつ医師の就労 第1報』 ○ 守田稔 生駒芳久 下川保夫
  P-74 『視覚障害をもつ看護師の就労 第2報』○ 藤原奈津子 安部恵子 中野規公美(きくみ) 村中恵子

 2019年6月2日(活字版は6月6日)から、『点字毎日』にて「ゆいまーるのこころだより」の掲載が始まりました。渥美正彦、生駒芳久、福場将太、守田稔と4人のゆいまーる所属の精神科医が順番に「こころ」に関わる記事を書き、月に1回の企画として掲載していただいています。
 タイトルの考案者は福場将太医師で、‘心に関するお便り’と、‘こころの頼りになる’とのダブルミーニングです。当初1年間12回の予定でしたが、さらに1年延長のお話をいただき、今後もしばらく掲載予定です。

 2019年9月には、私たち「視覚障害をもつ医療従事者の会(ゆいまーる)」が、第56回点字毎日文化賞を受賞し、10月23日に毎日新聞東京本社ビルで表彰式が行われました。また2019年12月14日には、第13回塙保己一賞 大賞を生駒芳久医師が受賞されました。これら2つの受賞につきましては、本誌内で改めてご報告させていただきます。

 何年も先にこの機関誌を読んだ時、そうそう2020年はそんな年だったよね、と思い出すかもしれませんが、この文章を書いている2020年3月末現在、世界では新型コロナウイルスの感染が拡大の一途を辿っています。日本でも東京オリンピックの延期が決まり、国内での感染拡大の警戒が強まっています。この機関誌第6号が発刊されるころには国内での感染終息に向けての方向性が見え、次の機関誌第7号発刊の時には世界全体で落ち着きを取り戻していることを願っています。