【点字毎日『ひと』】【機関誌第6号】     Top


      ■点字毎日活字版 2019年(令和元年)10月3日(木曜日)■


    『ひと』 点毎文化賞を受ける「ゆいまーる」代表 守田 稔さん(43)


 「ゆいまーる」とは、沖縄の言葉で「助け合い」の意味を持つ。沖縄出身ではないが、会の愛称に自分たちの目的と夢を託した。視覚障害のある医師らが貴重な経験を共有しようと、2008年に結成した。当初から代表を務める。「地道な交流が評価され、会のこれからに期待を寄せていただけたのがうれしい」と、顔をほころばせる。

 体の免疫異常で運動神経に障害の出るギラン・バレー症候群を患い、車椅子生活を送る。小学4年の時に発病し、医大生だった23歳で再発した。手足の障害に加え、次第に視力も低下した。全盲になったのは2001年。絶望感を抱く一方、「生きたい、働きたい」と強く願った。

 この年、医師法が改正され、視覚や聴覚に障害のある人も医師国家試験が受験できるようになった。これが気持ちをつないだ。学業を支えてくれた家族や学友たちにも勇気づけられた。そして03年、全盲で初めて医師国家試験に合格。精神科医を選んだのは、自身もうつ状態を経験したからという。「ストレスの多い現代社会、苦しんでいる人の力になれたら」と進路を決めた。

 診療経験を重ねる中で、06年に同じく全盲の医師とラジオ番組に出演したのがきっかけで会の結成を思い立った。患者の表情が見えない代わりに問診で心掛けていること、音声読み上げ機能のあるパソコンの利用方法など、情報共有の場の必要性を感じた。

 正会員は北海道から九州まで26人に増えた。仲間と出会い、「気持ちが楽になった」との声を聞くとうれしい。障害の有無を超えて、「一人じゃない」と誰もが感じる社会を目指している。障害者の就労問題に取り組むグループと合同で勉強会を開くなど、他団体とのつながりも広げている。

 改めて受賞への思いを尋ねると、「受賞はこれまで活動を支えてくださった、たくさんの人のもの」と感謝の思いをかみしめる。そして「自分たちの存在をもっと多くの人に知ってもらえたら」と言い、今回の受賞は「そのきっかけをいただきました」と笑顔を見せた。


 関西医科大卒。大阪市内で両親と暮らす。趣味は鉄道旅行。食べ歩きも好きで、料理の感想やそれについて調べたことを書きためている。【平井俊行】