【走ること】    【機関誌第6号】     Top


                  大 里 晃 弘(おおさと あきひろ)(茨城県)


 昨年(2019年)で最も大きな収穫は、生まれて初めてフルマラソンに参加し、完走できたことです。10月下旬に開かれた水戸黄門漫遊マラソン大会です。実は、3年前にもこの大会(第1回目)にエントリーして、練習していました。
 2016年6月頃だったと思います。走って10分もしないうちに、右のアキレス腱が痛くなり、走れなくなってしまいました。歩いている時に痛みはありません。そんな症状について、当時ゆいまーるのMLでも報告や相談をし、PTの方々からもご意見をいただいたり、関東地方会のテーマの一部にもなりました。

 半年程度、完全に休養しました。リハビリと捉え、ウォーミングアップの方法を変えて、毎回ウォーキングから始めることにしました。徐々にジョギングを再開し、翌年には何とか10キロを走れるようになり、更に体重を落としながらハーフ・マラソンの大会にも出られるようになりました。そして昨秋、水戸の大会のスタートに立つことができたわけです。

 さて、僕は今年の1月で65歳になりました。制度上は高齢者の仲間入りです。以前から自分の老化を意識するようになり、また何かしらの病気を持つようになり、年を追うごとに自分の衰えを感じていました。

 現在、職場では、心療内科として外来の仕事を中心に診察をしています。認知症疾患医療センターも担当しているため、認知症の患者さんと接することがとても増えました。その中で、患者さんや家族からは、「どうすれば、予防できるんですか?」「認知症の進行を防ぐには、どうしたら良いんですか?」といった質問を受けます。

 MCI(軽度認知障害)という、認知症予備軍とも言うべき状態があります。このMCIの人達は、健常に戻る人もいれば、認知症に進行する人もいます。予防とは、健常ないしMCIから認知症に進行しないこと、また認知症になったとしても、それ以上に進行することを予防することです。

 この予防には、運動や食事などの生活習慣を改善すること、また脳に刺激を与える「脳トレ」が大きな役割を持っています。ですから、患者さんや家族には、「自分に合った運動をするように」と強く勧めています。一般市民向けの健康教室でも、そうした予防法について説明します。

 さて患者さんや一般の市民の方々には「運動をしろ」と言いながら、自分の老化、衰えについてはどうなのだろうかと考えました。仕事をしていて、自分の記憶力や集中力、意欲が年を追うごとに低下しているようにも感じていました。自分自身の認知機能が低下しているのではないだろうか。自分自身が積極的に運動をすべきではないか。

 そう考えるようになり、この数年間、自分の生活の中でランニングをすることに力を入れるようになったのです。このランニングが、果たして自分自身の老化を予防し、認知機能の低下を予防してくれるのかどうか。運動だけでなく、食事や脳トレも心がけなければなりません。とにかく今は、ランニングに取り組み、フルマラソンに挑戦するつもりです。

 新型コロナで、伴走者と一緒に練習する機会も減っています。出場を予定していた大会もいくつ か中止になりました。しかし、慌てずじっくりと走り続けること。細く長く続けること。できれば70歳までは走り続けたいと考えています。