指 田 忠 司(さしだ ちゅうじ)
2021年1月31日、Zoomを利用したオンライン方式で「ゆいまーる」初の特別講演会が行われました。私が「ゆいまーる」で講演の機会をいただいたのは2011年の東京総会以来のことで、久しぶりに皆様にお話しし、質疑の機会を持つことができました。
講演会のテーマは、「視覚障害者の就労にかかる合理的配慮の提供の現状と課題 ー 雇用と福祉の連携による新たな取り組みの意義と可能性 ー」というものでした。雇用であれ自営であれ、視覚障害者が仕事をするには本人のスキルと努力だけでなく、職場や周囲の人々の支援や社会的な仕組みを通じたサービスが必要です。その場合、職場での支援と福祉サービスの仕組みとがうまくつながっていくことが必要になりますが、これまでは雇用と福祉の間の連携が十分ではありませんでした。
今回の講演では、こうした二つの分野にまたがるサービスをつなげていく新たな取り組み「雇用施策との連携による重度障害者等就労支援特別事業」について、視覚障害者に対する合理的配慮の提供の観点から制度利用の可能性と課題について紹介させていただきました。
この新たな取り組みの背景には、2019年の参議院選挙で2人の重度障害者が当選したことにあると言われています。その方々への対応をめぐって、議員として仕事をするのに必要な支援と、生活支援を主とする福祉サービスとをどのように提供すればよいかが問題となったのです。こうした具体的な課題が出たこともあって、雇用と福祉の連携のあり方について行政が本腰をあげたというのが実情でしょう。
特別講演の時点では新たな制度が開始されて間もなかったこともあり、視覚障害者の支援に関する地方自治体の取り組みは皆無でしたが、その後の報道によれば視覚障害者の通勤時の移動支援の例などが少しずつ見受けられるようになったようです。これは当事者によるニーズをふまえた制度要求があったことをうかがわせるものです。
今後、さまざまな仕事に就いている視覚障害者自身が必要なサービスについて行政に粘り強く働きかけていくことと同時に、支援者の養成や待遇改善などサービスを支える人材確保に向けた取り組みが必要になると思われます。