【7にまつわる 7つのエッセイ】  【機関誌第7号】   Top


 あなたは『7』という数字に何を連想しますか?
 2年に1度のゆいまーる機関誌も今回で7号目。そこでこのメモリアルナンバーにちなんで会員のみなさんから『7』にまつわる原稿を募集したところ、これまた素敵な偶然で7つのエッセイが集まりました。
 雨上がりの空にかかる虹のような、世界に広がる大海のような、七色の物語をお楽しみいただけたら嬉しいです。(福場)

  [1]「もうすぐ7周目」まだまだ修行中!


                 生 駒 芳 久(いこま よしひさ)(和歌山県)


 長年同じ仕事をしているからといって、仕事に手抜きはできません。それどころか、毎日毎日が新しい困難に直面するのです。65歳で停年退職した後、今の精神科特定医療法人に再就職して7年になります。私は病院では療養病棟という慢性期で高齢の患者さんが多いところを主に担当していますが、外来診察もしますので、そこからの新規入院者の主治医もすることになります。

 それで急性期の受け入れ病棟でも入院患者を担当しています。いずれの病棟でも高齢者となると、精神疾患の他に身体合併症を持つ患者さんが多くなります。高血圧、不整脈、糖尿病、肺炎などですが、それに加えて皮膚病や結膜炎、嘔吐、下痢、便秘などは日常的にみられます。

 私たち視覚障害をもつ精神科医は、身体疾患の治療は他の医師に依頼したり専門医に紹介するのですが、自分自身でしなければならない場合も生じてきます。文字通り手探りでいろいろやるようになりました。

 1.皮膚疾患 2.肺炎 3.心疾患 4.糖尿病 5.高脂血症などの代謝疾患 6.悪性症候群や横紋筋融解症 7.経鼻チューブの挿入など、総合内科あるいはいわゆる地域のかかりつけ医と同じです。

 まず、皮膚疾患ですが、これまで盲人にはできないものだとあきらめていました。ところがやり始めるとできることもあるのです。もちろん色はわからないので看護師さんの目を借りますが、皮膚に触れるとかなりのことがわかります。一番多いのは湿疹ですから、好発部位、手触り、特に皮膚の硬さ、形、大きさなど少しずつわかってきました。この頃では看護師さんが「先生にちょっと診てもらいましょうか」と言ってくれるので嬉しくなります。

 7番目の経鼻チューブは、口から食べられなくなった患者さんの鼻から胃までチューブを挿入して栄養補給をすることです。私自身はこの手技は手探りでするものだから視覚障害があってもできるものだと考えてきました。もちろんいろんなサポートが必要です。用具の準備、挿入した部分の長さを見ること、固定した後の処置、レントゲンで先端部のチェックなどですが、必要なサポートがあれば視覚障害をもつ医師でもできると信じてやってきました。ところが、最近は周囲が心配して、これをさせてもらえなくなりました。

 私たちの仕事は自分ひとりではできません。チームでやるものですから、誰かが不安を持っていたり嫌だと思っていることはできません。それに医療現場ではリスク管理が大事です。せっかく仕事をさせてもらっているのですから周りの足を引っ張るようなことは控えたいと思います。
 それに私はもう若くないのです。もうすぐ73歳、十二支でいうと7周目に入るのですから。