2023年8月28日
厚生労働大臣 加藤 勝信殿
視覚障害をもつ医療従事者の会（ゆいまーる）
代 表 守田 稔 (住所、携帯、Eメール)
ホームページ http://www.yuimaal.org/
「医療ＤＸ令和ビジョン2030」構築における視覚障害者の電子カルテ等アクセス確保の要望書
貴重なお時間を割いて私たちの声に耳を傾けてくださることに、心よりの感謝を申し上げます。本当にありがとうございます。
当会について、まず、紹介させていただきます。
この「ゆいまーる」の会は、見えない、見えにくいというハンディーを持ちながらいろいろな医療関係職に従事する者が集まり、情報交換を行ったり、親睦を深めていこうという趣旨の下に2008年6月8日に発足しました。
会員は程度の差こそあれ視覚に障害をもちながら日本各地で医療の職に従事する者たちです。
かつては視力を失った者が選べる就労の道は数少なく、特に医療職で働くことなどは本人も周囲も考えられないことでした。
しかし時代が移り、法律上の欠格条項の撤廃・緩和に加え、実務上の便利なデジタルデバイスの登場が追い風となって、目が不自由でも医療の道を歩める希望が示されました。私たちはまさにその新たな道の上に生まれた存在です。
デジタルデバイスの中でも特に革新的であったのが、パソコン画面を音声で読み上げてくれるソフトの登場です。これにより目が不自由な人間もパソコンを操作し、助けを借りずとも、正確な書類の読み書き、メールやファイルの送受信が可能となりました。
電子カルテが日本中の病院で導入される時代となった今、音声読み上げソフトを用いてこの電子カルテを操作できるのかどうかが、今の私たちの最大の期待であり、不安でもあります。それが可能であれば、私たちの業務の自由度は飛躍的に向上します。逆にそれが不可能であった時、再び道が閉ざされてしまうことにもなるからです。
私たちはこれからも医療の道を歩き続けたい。その情熱は、どの医療者にも負けないと自負しております。そして、存在を許し支えてくれる患者たち、同僚たちへの感謝は片時も忘れたことはありません。
どうか「医療ＤＸ令和ビジョン2030」の構築において、視覚障害をもつ医療者も電子カルテを操作する場合を加味していただきますようお願い申し上げます。そのための自助努力・協力は惜しみません。私たちは必ずやご配慮いただいた電子カルテを自在に使いこなし、医療に貢献することでその恩返しをさせていただきたいと思います。
以下、要望事項を記させていただきます。
１ ロービジョン者、全盲者のどちらにも電子カルテへのアクセスに配慮を希望します。
ロービジョン者は必要な個所を拡大するなど、目を使って作業します。他方、全盲者はマウスが使えずキーボードだけで操作し、音声により情報を理解し、作業します。
２ 音声読み上げソフトや拡大機能など、作業に必要なソフトをインストールできることの保証を希望します。
多くの視覚障害者が使用している音声読み上げソフトが、セキュリティーの観点からインストールできないケースがあります。
日本で多くの視覚障害者が一般的に使っている音声読み上げソフトがインストールできることの保証を希望します。
３ 視覚障害者と電子カルテの問題についてヒアリングを希望します。
私たちの会には、今まさにこの問題と直面している者もいれば、過去にこの問題を解決できなかった経験を持つ者が多数います。
現状を知っていただくためのヒアリングをしていただきたく存じます。
４ 先に成立した「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法」に準拠した医療現場改善の推進を願います。
５ 情報障害の中核となっている電子カルテ等のアクセシビリティについて、以下の2点について確保していただくことを要望いたします。
ア 標準化電子カルテ、または医療情報の標準化クラウド環境において、主に全盲者が操作可能になるよう、信頼できるスクリーンリーダー（音声読み上げソフト）、またはWindows標準搭載の読み上げソフトにおいて、遜色なく読み書きができるようシステムの構築をお願いいたします。
イ 標準化電子カルテ、または医療情報の標準化クラウド環境において、ロービジョン者が円滑な操作ができるように文字サイズやコントラスト、またはUDフォントなどへの書体変更など、これらの設定調整ができるようシステム構築をお願いいたします。
＊視覚障害をもつ医師が、どのように診療しているかを知っていただくために、臨床場面をご紹介いたします。
2023年8月14日（月）
NHK 北海道「ぼくだからできること 〜美唄・全盲の精神科医の日々〜」
全盲の精神科医・福場将太さん（43）
https://www.nhk.or.jp/hokkaido/articles/slug-n7078ec370260