【会員より】     【機関誌第3号】     Top


     トイレの出会いが生んだ学会誌テキスト化

                        守 田 稔 (大阪)

 視覚障害をもつということは、情報障害をもつこととも言い換えることができます。最近では、音声パソコンをはじめとした科学技術の発達に伴い、10数年前に比べて視覚障害者も格段に情報にアクセスできる可能性が増えました。しかし、そのような状況でもユーザーの限られる専門的な医療情報は、まだまだ視覚障害者が読める形で平易に入手できる機会は限られています。

 2009年、京都で開かれたゆいまーる第2回総会でも、医学情報を音声パソコンで読める形でいかに入手できるだろうかとの話し合いがされました。その中で、各人が入会している学会から定期的に郵送されてくる学会誌をテキスト情報で入手することはできないだろうかということも議題になりましたが、具体的な方法は見つからないままでした。

 時が流れて2011年10月26日・27日、東京・お台場にて第107回日本精神神経学会学術総会が開催されました。私は母親に車いすを押してもらって和歌山の生駒先生と一緒に参加しました。

 1日目の終わりが近づき、お手洗いに寄ってから帰ろうと多目的トイレの前で待っていると、ご婦人から「トイレをお待ちですか?もしかして目がご不自由ですか?」と声をかけられました。それが劇的な出会いの発端でした。その時、トイレから出てこられたのが守屋裕文先生で、声をかけてくださったのが奥様の敏子様でした。

 奥様は、声をかけたときの私の目の動きで、私が目が不自由と気づかれたそうです。守屋先生も目がご不自由で、その時、私と生駒先生に会えたことを喜んでくださいました。先生は、なんと日本精神神経学会の副理事長をされていたことがあり、学会誌の情報をゆいまーるに提供していただけないかを学会の理事であり編集の責任者である細田先生にお願いしてくださいました。その結果、編集委員会のご理解を賜り了承していただくことができました。

 現在、精神神経学雑誌編集委員会から学会誌のテキストデータとPDFデータをゆいまーるに毎月提供していただいています。それをボランティアの方の協力を得て、表やグラフなども文字情報に書き換えるなど、音声パソコンで読みやすい形に編集していただいています。そのようにいろんな方のお力をお借りして完成したテキストデータを、日本精神神経学会員であり、ゆいまーるに入会されている先生方にお送りすることができています。

 “なったらいいな”って思っていたことがトイレの前での出会いから進展するなんて、何かが起きる時は場所と時間は関係ないのだなと感じました。そして医学情報のテキスト化にご協力いただいているすべての皆さまに感謝しています。