村 瀬 樹 太 郎(東 京)
世の中にはいろいろなチームが存在する。野球などのスポーツチーム、企業でのプロジェクトチーム、音楽でのバンドやアイドルグループなどさまざまである。そもそもチームとは、ある目的を達成するために協力して行動する集団である。医療現場、特に病院での臨床の場においては、栄養サポートチーム、感染管理チーム、褥瘡対策チーム、緩和ケアチームなど、それぞれの専門的な分野において多職種が集まったチームが存在する。
私は、大学病院でいま緩和ケアチームの専従医(チームの業務が全業務の8割以上)として働いている。緩和ケアチームは、主にがんと診断された患者とその家族に対して、あらゆる苦痛をできる限り緩和し、質の高い生活が送れるよう支援するチームである。医師・看護師・薬剤師・栄養士・リハビリ訓練士・メディカルソーシャルワーカーなどのさまざまな専門職種により編成される。
患者の苦痛は、がんによる痛みだけではない。呼吸苦や不眠、不安など身体的苦痛と精神的苦痛がある。それ以外にも、金銭的な問題、仕事の問題、家族の問題など社会的な苦痛もある。また、答えのない苦痛、例えば、どうしてこんな病気になったのだろうか、私に何の価値があるのか、死んだらどうなるのか、というような魂の叫びはスピリチュアルな苦痛という。これらの苦痛を抱えている患者とその家族に対しては、支援者 一人でできることは限られており多職種でのアプローチが不可欠である。
さて、チームの 中心的な役割を果たす立場として、よりよいチームにするためにどうするかを考えてみる。チームが周りから必要とされ効率的に活動するためには何が必要だろうか。効果的なチームにするために、7つの要素があると言われている(The T7 model of team effectiveness)。そのうち5つはチーム内要素、2つはチーム外要素に分けられる。
5つのチーム内要素は次の通りである。
@ Thrust (目的):チームとして達成すべき目的を明確にし、共有すること。共有した目的を持つことでチームが団結する。
A Trust (信頼):メンバー間の信頼関係を築くこと。信頼関係があることで、お互いを尊重し個々の能力をより発揮しやすくなる。
B Talent (才能):目的を解決するためにチームメンバーの才能を結集すること。チームはメンバー個々の技術・経験・行動力の集合であり、個々の専門的な能力がチーム力の基盤となる。
C Teaming skills (チームスキル):チームとして効果的かつ効率的な活動をすること。チームとしての意思決定の方法、チーム内で意見が対立したときのまとめ方、チームの意見の言いやすい雰囲気づくり、チームでの学習方法、資源管理などがチームの成長を左右する。
D Task skills (問題解決スキル):目的をうまく解決する能力を持つこと。問題の焦点を適切に捉え、その過程と結果に関する評価を行える必要がある。
一方、2つのチーム外要素は次の通りである。
E Team leader fit (チームリーダーの適正):チームリーダーとして素質を持っていること。リーダーはメンバーのニーズを理解しチームをまとめる力、問題解決に対する責任感、行動力などを持つことが必要である。
F Team support from the organization (組織からのサポート):組織からチームへの援助があること。活動をするうえで必要になる適切な資源(お金・機材・情報など)、チーム活動が役割を果たすことでチームが認められるという報酬などを受けられる環境がよりチームを活性化させる。
以上、7つの要素をバランスよく持ち合わせるとよいだろう。個人の集合であるため、それぞれの多様な価値観をふまえながらチームをまとめることは簡単なことではない。チームメンバーのことを知るには“飲みニケーション”もほどよくあるといいかもしれない。
考えてみると、家族もひとつのチームとも言える。生活の安定と幸せのために協力する集団。相手の意見も尊重しながら将来設計を組み立てていく。新たな家族が誕生し、ふとそう思った。