【第110回 日本精神神経学会学術総会】     【機関誌第4号】     Top


       会 期:2014年6月26日(木)〜28日(土)

       会 場:パシフィコ横浜


   ■ シンポジウム 27(6月26日) 『日本における視覚障害をもつ精神科医の現状』


 ◎ 司会

   守 屋 裕 文(医療法人 社団翠会 成増厚生病院)

   守 田 稔  (医療法人 良仁会 かわたペインクリニック心療内科)


 ◎ シンポジスト

   生 駒 芳 久(和歌山県立こころの医療センター精神科)

    「公立精神科病院における全盲の視覚障害をもつ精神科医の日常業務について」


   大 里 晃 弘(医療法人 日立渚会 大原神経科病院)

    「50歳からの再出発 〜 民間精神科病院における全盲医師としての現状と課題 〜」


   守 田 稔(医療法人 良仁会かわたペインクリニック心療内科)

    「全盲精神科医のクリニックでの診療業務と視覚障害をもつ医療従事者の会」


 ◎ 主 旨

 日本精神神経学会会員の中に重度の視覚障害をもつ精神科医たちがいることをご存知でしょうか?
 その医師たちは、今、臨床の現場で働いています。医師になった後で全盲になった精神科医だけではなく、医師国家試験を受ける時点で既に全盲であった精神科医たちがいます。

 2001年、医師法が改正され、視覚や聴覚の障害を理由として医師の資格が剥奪されることはなくなりました。この法律改正後に、これまで2人の全盲の視覚障害者が医師国家試験に合格し、その2人とも精神科医になりました。また、すでに医師であったものが視力を失った後でも精神科医として診療業務を行っています。さらに、精神科医に限らず、リハビリテーション医や内科医として仕事をしている医師がいます。

 視覚情報は我々人間が利用する情報の90%以上を占めていると言われます。そのため、かつては視力を失うことは医師生命を失うことと同義でした。我が国の医師法もそのようになっていました。ところが米国では、すでに1910年代に、盲人の臨床医がいるとの報告があり、1970年代には全盲で医学校に入学、卒業した事例がありました。

 そして我が国でも、障害者に対する機会均等を求める流れの中で、またパソコンをはじめとする各種情報機器の発展により、全盲であっても医師の仕事ができることを臨床現場で実証されつつあります。

 今回、全盲になってから医師国家試験に合格した精神科医2名と医師になってから全盲となった精神科医1名をシンポジストとし、視覚障害をもつ本学会会員が、どのようにして精神科医となり、どのような状況の中で臨床を行っているかについて発表します。また視覚障害をもつ医療従事者のネットワーク「視覚障害をもつ医療従事者の会(ゆいまーる)」についても併せて報告します。