【おめでとう、ゆいまーる!】【機関誌第6号】     Top



                  福 場 将 太(ふくば しょうた)(北海道)


 歴史ある点字毎日文化賞を、この度『ゆいまーる』がいただくことができたのは、何といってもこの会を発足させ、今日まで10年以上も存続させた守田代表のおかげである。
 そこでこのめでたい折に触れ、この会の存在意義について一考してみたい。


  1.同じ苦労を持つ仲間たち

 病気であったり境遇であったり、同じ苦労を持つ者が集う会を自助グループと呼ぶ。古くはアメリカで、アルコール依存症患者が教会に集って語り合うことから始まったアルコホリック・アムニマス(AA)が有名だ。

 『ゆいまーる』の会員の共通の苦労は、目を患っていること、なおかつ医療に携わっていることだ。では、集うことでどんな効果が生じているのか。
 まずは仲間ができて孤独が和らぐ。そして互いの経験を分かち合って知恵や技術を育むこともできる。しかし何よりの効果は、気付きを与えてくれることだ。

 どうして自助グループが依存症患者から始まったのか。その一つの理由は依存症が不治の病であること。一度患えばもう断酒を一生続けるしか解決法はない。よって依存症患者が目指すのは、お酒がなくても幸福を感じられる新しい生き方。生き方を変えるためには何かに気付く必要がある。これまで知らなかった新しい何か、ずっとそばにあったけど意識していなかった何か。大切な何かに気付けた時に、人は生まれ変わることができる。

 治療困難という点では視覚障害も全く同じ。また目が見えるようになるのならそれに越したことはないが、例えそれが無理でも、視覚障害は克服できる。目が見えなくても幸せを感じられる新しい生き方を見つければよいのだ。『ゆいまーる』は、そのために必要な気付きをいくつももたらしてくれる。

 また特に興味深いのは、ここに集っている仲間は患者でもあり医療者でもあるということ。障害の当事者が集う会、支援者が集う会は色々あるが、その両方を同時に成立させた会というのは画期的だ。この一風変わった自助グループからどんな化学反応が起こるのか、今後も楽しみにしたい。


  2.今でもずっと迷ってる

 改めて考えてみる。相手の表情がわからない、カルテを読めない、注射も打てない…そんな人間が医療に携わることはどうなのだろう。不安に思われても当然だ。
 そしてそんなことは本人だってわかっている。意地を張らずに引退した方がみんなのためなんじゃないか、いつかとんでもない失敗をするんじゃないか。きっと『ゆいまーる』の仲間は、みんなこの迷いと闘いながら毎朝出勤している。

 ではその迷いを押してまで、どうして医療従事者を続けているのか。その理由はそれぞれだと思うが、もしかしたら五体満足で医療に携わっている人間よりも、腹をくくっているんじゃないかと思う。何倍も葛藤しているけど、だからこそ何十倍も覚悟しているんじゃないかと思う。

 もちろんどんなに覚悟しても迷いは常にある。それでも今は断言できる、視覚障害者だからこその医療もあると。視力を失ったからこそ気付ける痛み、生み出せる言葉、研究できるテーマがあると。
 今回の受賞も、継続は力なりで手にした一つの成果。これからも逃げずにやり続けることに意味があると信じている。


  3.祝 辞

 守田代表はいつもあたたかい言葉をくださる。やはり一番大切なのは人間力なんだなとその度に感じる。視力じゃ勝てなくても人間力なら負けない、『ゆいまーる』にはそんな仲間がたくさんいる。

 そしてもちろん、この会の活動には協力してくれる人たちの存在が不可欠。代表を慕って集った優しいスタッフさんには、いつも頭が下がるばかりだ。
 守田代表、そしてみなさん、この度は本当におめでとうございます! やったぜ!