渥 美 正 彦(あつみ まさひこ)(大阪府)
大阪市大正区の某大病院から転院したばかりの近所の眼科を12月26日、受診したところ、「左の網膜に4カ所穴が開いている」と言われてしまいました。
元々、左眼はほとんど使っていないこともあり、まるで気にしていませんでしたが、飛蚊症が出ていたのがその兆候だったかも、とのことでした。
正月中に網膜剥離になっては面倒。翌日、近所の近畿大学病院眼科を受診し、レーザーで焼いていただきました。治療自体はチクチクする程度で何ということはなかったのですが、眼球を押さえられているうちにだんだん胸が重くなってきて、気がつくとその場に崩れ落ちてしまいました。
たぶん、数秒間 意識が飛んでいたのではないでしょうか。生まれて初めての失神です。
おお。これが神経内科時代に診断しまくっていた「神経調節性失神」というやつでは!
眼球の圧迫、頸部の圧迫などのほか、採血、咳、歯磨き、息堪え、排便、排尿などがきっかけで起こる現象です。よく「てんかん」とか「一過性脳虚血発作」と勘違いされますが、ただの自律神経の反射で、無害です。
無害ですが、しんどかった! まさか自分で経験することになるとは夢にも思いませんでした。長椅子に転がって足を上げ、数分で意識がはっきりしてきましたが、先生からは
「いやー、お若い男性に多いんですよ」と、お世辞なのか何なのかよくわからないご評価をいただき、看護師さんからは
「死人みたいな顔色ですよ」と、ほぼお悔やみと言っても過言ではない心配のされ方をして、自分自身はこんな機会は滅多にない、とスマホで顔面蒼白の顔を自撮りして、ふらつきながら治療再開。
その後は無事に治療を終えることができました。
いろいろな意味で、患者さんの気持ち体験ツアーになりました。いい経験でした。これからは、採血して倒れた患者さんには、もっと優しくしよう。
(2019年12月27日 メーリングリスト〔ML〕より)
◆ 佐藤 正純医師(東京都)
渥美先生
神経調節性失神のご体験報告ありがとうございました。私もよく神経内科の講義の中で、若い女性に多いが、高齢者でも起きる神経症状と教えてきました。
先生が指摘された原因のほかに、ここ数日の寒さから暖かい室内への気温変化も誘引になったのではと思いました。私自身は脳挫傷後遺症患者なので、てんかんによる失神発作は2回ほど経験していますが、発作前と回復後の倦怠感はなんともいえないですよね。
(2019年12月28日 MLより)
◆ 田中 康文医師(栃木県)
渥美先生のメールを見て、眼球圧迫が原因で徐脈になって失神したのかなと想像していました。
自治医科大学神経内科在職中は、自律神経担当の講義も受け持っていたので、アシュナーテストといって眼球圧迫により迷走神経を刺激すると徐脈が生じ、危険を伴うので、このような手技やテストを行わないよう学生によく教えていたことを思い出しました。
(2019年12月29日 MLより)