【大阪保険医雑誌】   【機関誌第7号】     Top


  大阪府保険医協会発行『大阪保険医雑誌』2022年3月号

  【ピープル】視覚障害をもつ医療従事者の会(ゆいまーる)

        ー 患者でもあり医療者でもある障害当事者が集う会 ー

             代表 守田 稔

 私は医学部時代に病気で上下肢障害をもち、目は光も感じない全盲となりました。当時は目が見えないと医師になれない法律(絶対的欠格条項)がありました。2001年7月に「障害者等に係る欠格事由の適正化等を図るための医師法等の一部を改正する法律」が施行され、合計27の法律に改正が行われました。欠格条項が撤廃、あるいは絶対的なものから相対的なものへの緩和が行われたため、私は目が見えなくても医師国家試験を受けることができ、合格しました。

 多くの医療職で法律は改正されましたが、視覚障害をもってどのように仕事をすればいいか誰にもわかりません。そこで2008年6月、見えない、見えにくいというハンディを持ちながらいろいろな医療関係職に従事する者が集まり、情報交換を行ったり、親睦を深めていこうということを目的に、「視覚障害をもつ医療従事者の会(ゆいまーる)」が発足しました。「ゆいまーる」は沖縄の言葉で、結びつきや相互扶助の意味があります。

 活動としては、コロナ禍以前は、総会を毎年関東・関西で交互に開催し、勉強会も関東・関西で年4回程度開催してきました。現在、集会は自粛していますが、オンラインによる交流会や勉強会を行っています。また発足以来、メーリングリストで情報交換を行い、HPや2年おきに発刊する機関誌で会の活動を発信しています。過去の活動は、ゆいまーるHPでご覧いただけます。

 発足当初20名に満たなかった会員も、2022年2月現在は協力会員を含めて90名を超えました。視覚障害をもち何らかの医療資格を有する会員は、医師18名、看護師11名、理学療法士12名を含め40名を超えています。入会したことで自分一人ではないと勇気をもらった、役立つ情報と繋がりやすくなったと話される方もいます。また自らの体験をラジオや講演会で話す会員も増えてきました。

 2018年9月に行われた「第27回 視覚障害リハビリテーション研究発表大会in神戸」では、視覚障害をもつ医師と看護師の就労について、会員がそれぞれポスター発表をしました。医師の内容は、当会HP【機関誌第6号】「視覚障害をもつ医師の就労」に掲載されています。また、2019年4月から当会所属の精神科医が毎月順番で、今年創刊100年を迎える国内唯一の点字新聞「点字毎日」に心に関するお便りとして「ゆいまーるのこころだより」を執筆しています。

 2001年の法律改正は、確かに視覚障害者にとって医師を含めた医療職における職域を拡大しました。しかし、それは視覚障害者が医療の現場で仕事ができると約束したものではありません。また職種によっては就労の継続が困難になる事例も多々あります。

 私たちの仕事の多くが、周囲の温かい支えなしでは成り立たないのも事実です。この記事を読んでいただいたことをきっかけに、視覚障害をもつ医療従事者が日本にいること、一緒に働いていける可能性があることを知っていただければ、とても嬉しく思います。


 もりた みのる
 1975年、大阪府生まれ。1995年、関西医科大学入学。1999年、2度目のギランバレー症候群に罹患、上下肢と視覚に障害をもつ。2001年7月、失明、光覚も失う。同年同月、欠格条項改正の法律施行。2003年、医師国家試験にて視覚障害者に対する初めての特例受験を実施、全盲で合格。母校精神科を経て、2009年からかわたペインクリニック心療内科に勤務。2008年、視覚障害をもつ医療従事者の会(ゆいまーる)発足、代表。鉄道でのお出かけと食べ歩きが大好き。

 NHKラジオ第2「視覚障害ナビ・ラジオ」、ラジオ日本「小鳩の愛」、NHK総合「おはよう関西」等出演。m3.com地域版【奈良】掲載。

 視覚障害をもつ医療従事者の会(ゆいまーる) http://yuimaal.org/