【事例1 社会福祉士、精神保健福祉士、公認心理師国家試験受験レポート】 【機関誌第7号】 Top
「ゆいまーる会員の音声を使った受験事例」(第2報)
◆ 事例1「社会福祉士、精神保健福祉士、公認心理師国家試験受験レポート」
石 倉 正 徳(いしくら まさのり)
現在、福祉現場で就労しており、さまざまな相談を受けることがあります。利用者さまへの支援は、現任者研修等の知識や先輩からの指導による経験的な支援になりがちでした。そのため、専門的な知識を習得することや自らの視野を広げ、訓練を継続し、支援の質を高めることを目的に国家試験を受験することにしました。
受験に当たっては、まず、受験のための学習環境(参考書や問題集等)が準備できるか不安でした。また、受験に当たって全盲の視覚障害者に必要な配慮があるのか、円滑に受験できるのかが不安でした。そこで、試験の概要について、試験実施機関のHP等を参考に受験が可能かをおおまかに閲覧し、わからない部分は試験実施機関へ直接問い合わせました。
試験勉強は、点字図書館で書籍の朗読や問題集をテキスト化していただき、それらのデータを基に学習をしました。また、気分転換に音声を聞くだけですが、ユーチューブで参考となる番組やSNSを検索してイメージを膨らませました。
次に受験配慮の準備は、スクリーンリーダーソフトを用いたパソコンでの受験というそれまでの形式的配慮にはない受験方法を希望していたため、受験予定の2年前から試験実施機関へ問い合わせをしました。しかし、試験実施機関では、具体的な配慮の相談は受験願書および特別措置の申請書の提出を受けてから正式に配慮について検討・相談を始めるという姿勢でしたので、あくまで意見の聞き取りに留まっていました。
実際の受験手続きでは、受験願書に加えて、身体障害者手帳の写し、医師の診断書、配慮を希望する申出書等を提出しました。希望した配慮内容は、個室受験・試験時間の延長(1.5倍)・パソコンを活用した試験実施(解答を含む)・試験会場内での誘導としました。
申請後、試験実施機関の担当者から配慮内容についての方向性が示され、受験票発送期日間際まで担当者と受験配慮に関する調整をしました。結果は、パソコンを用いた受験に変えて、代わりにデイジーCD(音声を録音したもの)を用いた試験実施と解答の代筆とされ、その他の配慮は概ね希望どおりとなりました。
今回の試験では、試験実施機関としてスクリーンリーダーソフトを用いたパソコンでの受験を検討していただけている感覚がなく、マニュアルに基づいた配慮内容が示されたように思いました。一方、配慮希望と実際の配慮の相違について、具体的な相談を試験実施機関の担当者と継続できたことで、できることとできないことの整理ができ、建設的な協議ができたと思います。
本来、受験者が必要とする配慮は身体状況等により異なるもので、現状でも診断書や特別措置の申請書に基づき、特別措置委員会によって審議・決定をされているものの、マニュアルや想定された配慮の組み合わせ以外にも試験実施機関が受験者から十分に状況や配慮希望を聞き取り、相互に微調整を積み上げていく必要があると考えます。
今後、期待することは、さまざまな状況下にある受験者がベストコンディションで受験できる環境づくりが検討される場の確立であり、試験実施機関と相互理解を図り、適切な配慮が受けられることだと思います。最後にさまざまな工夫と協力体制があれば、重度の障害を有していても試験受験や資格取得が可能なことがわかりました。もちろん、全てが希望に沿えた配慮でなくてもチャレンジできる環境を少しずつでも整備していく必要があると考えています。また、それは後に続く仲間の道筋を作ることにも繋がるのだと思いました。