【事例2 社会福祉士、精神保健福祉士国家試験受験レポート】 【機関誌第7号】 Top
「ゆいまーる会員の音声を使った受験事例」(第2報)
◆ 事例2「社会福祉士、精神保健福祉士国家試験受験レポート」
前 北 奈 津 子(まえきた なつこ)
私は、2021年2月に社会福祉士・精神保健福祉士の国家試験を受験、合格した。今回、学校や訓練機関、試験センターなど多くの人の協力を得て、一番実力が発揮できる方法で試験を受けることができた。このような環境を与えていただいたことに、心より感謝している。今後受験を考える人の一助になることを願い、今回の体験を報告しようと思う。
私は、小児科の看護師として勤務してきたが、30代のころに視覚障害となり、一度は働くことをあきらめたが、さまざまな人と出会う中で、もう一度対人援助の仕事をしたいと考えるようになった。そこで、相談援助や福祉について学ぶために大学へ編入学し、社会福祉士と精神保健福祉士の資格をとろうと考えた。
大学入学直後、先生に両方の資格をとるための相談をした。受験をサポートするワーキンググループを作っていただき、学校でのテストや国家試験受験方法をいろいろ検討した。その結果、一番解答しやすい方法は、テキストデータの問題文をパソコンのスクリーンリーダーで読み、そのデータに直接入力することであった。
試験センターには、受験前年度の春、現状の視覚障害者への配慮について問い合わせを行った。その時点では、点字による受験か、デイジーCDを用いた受験が認められているという回答であった。そのため、パソコンのスクリーンリーダーを用いた受験が可能となるよう働きかける必要があると判断した。
そこで、主治医、訓練機関、学校からの意見書で嘆願書を作成し、試験センターに提出した。主治医には現在の見え方、訓練機関にはパソコンのスクリーンリーダーを用いた受験が多くの視覚障害者にとって有益であること、学校には代読者による音声読み上げとパソコンのスクリーンリーダーを用いた場合の解答時間のデータなどについて意見をいただいた。
その後、試験委員会から受験申し込みの際に、具体的な配慮を申請してほしいという回答を得た。申請した配慮内容は、テキストデータでの問題文提供、解答はスクリーンリーダー搭載のパソコンに記入すること、試験時間の延長(1.5倍)、点眼薬の使用、日光が当たらない座席、別室受験、盲導犬や介助者の同伴、会場内での誘導である。その後、試験センターの担当者と電話でも内容を確認した。
配慮決定通知の内容は申請した通りであった。時間は1.5倍であり、自身のパソコンを用いてUSBで配布されたテキストデータ形式の問題に直接解答を記入して提出、解答用紙も持参したプリンタで印刷することとなった。盲導犬や介助者の同伴、点眼薬の使用、暗幕のかかった部屋での受験なども認められていた。
受験票には、USBに入ったサンプル問題が同封されており、指定された方法で解答して送り返すようになっていた。
結局、解答は口頭で、代筆者がマークシートに記載するという方法が一番いいと判断した。今回の試験では、自分が希望する形式での受験を認めてもらえることができ、慣れた自分のパソコンで試験を受けることで、安心して試験に集中することができた。当日、試験会場で困ることは特になかった。
今回の試験準備でも、教科書のテキストデータの提供、授業や講習時の図表の口頭説明、参考書や講習会テキスト・模擬試験問題のテキストデータ化など、本当に多くの人に協力していただいた。そのお蔭で国家試験を受験し、新たな資格を取得、自信を持つことができた。
私は現在、相談支援専門員として福祉の現場で、目標であった対人援助の仕事に再び就くことができている。障害があっても見えなくても、夢や目標を持つことをあきらめずに、これからもいろいろなことに挑戦していきたい。そして、私の挑戦が次の誰かの新しい一歩を後押しすることができればと願う。