戸 田 佳 代(とだ かよ)(東京都)
『冬 桜』
漱石の「こころ」読初ページ繰る (そうせきの「こころ」よみぞめ ぺーじくる)
湯豆腐に母娘の絆深めつつ (ゆどうふに おやこのきずな ふかめつつ)
花活けて莟ほころぶ喪正月 (はな いけて つぼみ ほころぶ もしょうがつ)
手を叩き鳴竜なかせ春遅々と
参詣し焚火の中の人となり
蓋付の器の中のむつを食む *むつ(魚へんに陸のつくり)
丹沢の稜線白く雪被る
贈らるる莟ばかりの冬桜
冬麗富士に向ひて鳥の群 (ふゆうらら ふじにむかいて とりのむれ)
山査子の実を拾ひ来て旅果つる (さんざしのみをひろいきて たび はつる)