【会員より】    【機関誌第8号】   Top


     防災士資格取得、「壁」と「お礼と報告」

               藤 原 義 朗(ふじはら よしろう)(高知県)

1 1995年 震災からの出発

 阪神・淡路大震災以後、パソコンもWindowsに代わり、PC-Talkerもでき、ホームページや電子メールの時代に入っていった。災害が起きる度、厚労省のHPから災害救援情報を取り、被災地の障害者支援の拠点へ送信していた。

2 転機は2011年

 (1)「テキストファイリングシステム オブ PDF」
 厚労省の東日本大震災のHPからは日に数本の救援情報が出るが、PDFばかりでしかも表が多く、音声で読むには手を入れなければならないことに気づいた。
 全国音訳ボランティア連絡会の会長に相談した。試行錯誤の後、PDFをテキスト化するシステムができ、藤原のパソコンからの被災地への送信が始まった。ニーズは「放射能野菜」「生活情報」「受験参考書」から「専門書」まで広がっていった。

 (2) 点字・大活字避難所運営ゲーム(HUG)
 東日本大震災で視覚障害者の場合、一旦助かった命が1年後に1割以上死亡していることから、避難所での視覚障害者の受け入れを考えるワークショップを考案し活動を始めた。
 ゆいまーるでも、関西 ゆいまーる勉強会で17年3月、関東地方会で17年9月に実施した。

3 防災士

 2003年、日本防災士機構(以後、機構)が発足、防災士資格認定制度ができた。23年現在、26万人が登録されている。
 資格取得には、
 (1) 防災士教本(約400頁)の学習
 (2) 自治体で行う防災士養成研修講座の受講(12講目以上)
 (3) 履修確認レポート提出(約450問の穴埋め式)
 (4) 防災士資格取得試験の合格(80点以上)
 (5) 救急救命講習の履修(医師は免除)

4 援助と挑戦

 (1) 防災士教本
 2022年に、情報アクセシビリティ施策推進法が成立したが、教本のデータはもらえなかった。
 文章部分は、オーテピア高知 声と点字の図書館に頼みスキャナーでOCR、大急ぎでテキストデータを作成していただいた。試験まで日がないので校正は1校までとした。表部分のテキスト訳は、対面音訳で補った。

 図の解説は、
 @ 避難所や危険場所を示すピクトグラムは、レーズライターで作製。
 A 高知みらい科学館で地学の先生や防災士資格を取得されている方に、図の部分を一緒に指差し法などで、それこそ手取り足取りでの指導。
 B 新潟大学の渡辺先生がハザードマップや気象図の3Dを作製。

 (2) 防災士資格取得試験は、その出題文をパソコンでの読み上げを希望した。ゆいまーるの仲間の試験時のパソコン受験を求める資料も参考にし、機構へ要望した。機構からは、パソコン受験はできない、視覚障害者への読み上げに慣れた者が行う、との返事であった。時間は50分延長を求めたが認められなかった。

 (3) 本番
 10月、高知市試験会場には、機構から3名の方が来られた。普通は2名だそうだ。別室で読み上げ方式の試験が始まった。30問、三者択一方式である。読み間違いが数カ所あった。

5 合格通知

 8日後、通知が来た。満点合格である。お世話になった方々にお礼メールをした。その中で、「特別な配慮をしなくても合格するじゃないか」と思われるから、今後のために「報告と提案」をすべきですよ、とアドバイスをいただき機構へ行くことにした。

6 お礼と報告

 (1) 機構へは「配慮のお礼と報告をさせていただきたい」とお願いし、アポイントを取ることができた。以前の私なら、ここで交渉という形で臨んでいた。

 (2) 11月、元所沢の国立障害者リハビリテーションセンター研究所の北村弥生先生と機構へ行った。関東学習会のHUGでコメントしていただいた方である。
 @ 機構の理事に、教本をテキスト化して学習したことを伝え、作成した3Dやレーズライターも見ていただいた。
 A 読み上げ時の具体的な課題をメモし報告した。

7 地域の力に

 低姿勢はゆいまーるで学んだ。今後、視覚障害の方が教本のテキスト化とパソコン受験を求めていく時には力になりたい。人生、視力の壁で思う目標にたどり着けないことが多かったが、壁がありながらも挑戦したことの一つが防災士である。きっといつか視覚障害のある防災士が多数誕生する日が来るだろう。
 「視覚障害防災士連絡会」なるものをつくり、大きな防災減災力を担える地域の力になれば幸いである。