【シンポジウム 27 ー 守 田 稔】     【機関誌第4号】     Top



  「全盲精神科医のクリニックでの診療業務と視覚障害をもつ医療従事者の会」


 ○ 本日の内容

  1.はじめに
  2.日常業務の概要
  3.視覚障害をもつ医療従事者の会(ゆいまーる)
  4.まとめ


 1.はじめに

 【生活歴】
  1995年(19歳) 医科大学入学
  1999年(23歳) ギランバレー症候群発症
          全身麻痺 右眼失明(左眼中心視野のみ残存)
  2001年(25歳) 5回生に復学 同年夏、左眼も失明
     *6月  医師法の欠格条項改正
  2003年(27歳) 2月:全盲で医師国家試験受験  3月:合格  8月:医籍登録


 【勤務歴】
  2003年(27歳) 母校精神科に入局、研修
         ・研修期間終了後、性同一性障害の外来担当
         ・盲人福祉センターで音声パソコンの技術習得
         ・視覚障害をもつ医療関係者とのネットワークを広げ、情報交換を行う
  2009年(33歳) かわたペインクリニック 心療内科勤務開始


 2.日常業務の概要

 【診察室の環境】
  ・ペインクリニックの一部門としての心療内科
  ・心療内科スタッフは発表者を含め4名
  ・診察時、スタッフ2名が在室、診察をサポート


 【移動】
  ・車いすに着座し、基本的に診察室から移動なし
  ・トイレの時のみ、車いすのままスタッフの介助で移動


 【スタッフのサポート内容】
  (1) 事前の患者情報、問診票、心理検査、血液検査などの情報提供
  (2) 予約管理、処方箋入力、紹介状・診断書入力、読み上げ確認
  (3) 患者の呼び込み、案内、他診療科との連携調整
  (4) カルテ記載、音声パソコンで作成したカルテ内容の貼り付け
  (5) 説明用の便利なボードの作成、パンフレットや資料の説明
  (6) 必要な医療情報の検索、読み上げ


 【診察】
  ○ 初診時
   ・診察前に事前の患者情報、紹介状、問診票、心理検査などの情報把握
   ・最初に視覚障害があることを説明
   ・診察中、診察後に音声パソコンでカルテ記載、印刷、カルテに貼り付け

  ○ 再診時
   ・診察前に、前回診察内容、検査結果などを把握
   ・必要時はパソコンにて紹介状、患者説明用文書などを事前作成


 【患者】
  ○ ペイン部門から紹介の患者に多い疾患:
     身体表現性障害 パニック障害 うつ病 不眠症

  ○ ペイン外からの患者に多い疾患:
     うつ病 双極性障害 パニック障害 強迫性障害 適応障害


 【リスクマネージメント】
  ○ 視覚を必要とする身体疾患の診察
    → クリニック内ペイン外来、内科外来に案内
    → 必要があれば、他医療機関に紹介

  ○ 患者への説明内容の理解促進
    → 患者説明用ボードの使用、パンフレットの活用、図書の貸出


 【医療情報の入手方法】
  ・DVD版医学書籍
  ・視覚障害者向け音声図書・点字図書のダウンロード
  ・医学書、医学雑誌のボランティアによるテキスト化
  ・ネット上の医療情報の活用
  ・学会、講演会への参加
  ・地域の精神科懇話会への参加


 3.視覚障害をもつ医療従事者の会 (ゆいまーる)

  発 足   2008年6月
  会員種別 正 会 員 … 視覚障害をもつ医療従事者
       協力会員 … 支援するボランティア、家族、友人等


  ○ ゆいまーるの活動
   (1) 行政や公的機関、企業等、社会に対して働きかけ
   (2) 学習、調査、研究活動
   (3) 会員間の親睦・交流
   (4) 広報媒体として機関誌の発行
   (5) 医学文献・書誌のテキストデータ等の作成と情報提供

  ○ ゆいまーるの現況(2014年6月現在)
    正会員  28名
         医 師   20名(内 精神科医 9名)
         理学療法士 7名
         看護師   1名

  ○ 全体集会 6月 総会  10月〜11月 秋の交流会

  ○ 地方集会 関東地方会      年4回
         関西ゆいまーる勉強会 年5回

  ○ その他の活動
   (1) 医学書籍出版社 問い合わせ・訪問
   (2) 視覚障害リハビリテーション研究発表大会 ポスター発表
   (3) 医療者向け音声認識音声入力ソフト 体験会
   (4) 視覚障害者向けパソコン音声ソフト製作会社 見学会
   (5) 医学文献検索サービス・音声パソコン 体験会
   (6) 視覚障害者共同自炊実証実験参加
   (7) 視覚障害者用機器展示会見学(東京・大阪)

  ○ メリット
    ・数少ない視覚障害をもつ医療同業者との出会い
      → 孤独感、孤立感の軽減
    ・視覚障害者の仕事の工夫、医療情報アクセスについての情報交換
      → 仕事の質の向上
    ・視覚障害者福祉施設、他の視覚障害者団体とのつながり
      → 生活の質の向上

  ○ 精神神経学雑誌(日本精神神経学会)
    ・2011年 第107回 日本精神神経学会学術総会(東京)
         守屋裕文先生との出会い
    ・2012年 精神神経学雑誌編集委員会から「ゆいまーる」へのデータ提供了承

   * 2012年1月号より雑誌のテキストデータ・PDFデータ提供開始
    ボランティアの協力で図表やグラフ等、文字情報に書き換え、学会会員にデータ提供
    学会非会員で、データ希望者に一般会員公開データを提供


 4.まとめ

  ・日常業務の概要
  ・視覚障害をもつ医療従事者の会(ゆいまーる)


 * 私の日々の仕事、生活ができていますのは、関係する多くの皆さまの温かなご支援のお蔭と感謝しています。